「PCXで、もっと遠くへ行ってみたい」
そう考えたとき、多くの方が期待とともに一抹の不安を抱えるのではないでしょうか。
日常の足として絶大な信頼を得ているPCXですが、果たして本格的なツーリングという舞台で、その真価をどこまで発揮できるのか。
燃費や取り回しの良さは知っていても、長距離走行における快適性や、高速道路・峠道での動力性能については、未知数な部分が多いと感じるかもしれません。
この記事では、そうした疑問や不安に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。
まず、PCXツーリングの快適性を支える特徴として、多くのユーザーから「快適なPCXは乗り心地良いと評判」と評価される理由を、フレーム構造からサスペンションの働きまで深く掘り下げます。
また、長距離での疲労を大きく左右する「エンジンからのpcx振動少ない点も魅力」であること、そして「pcx静音性高いので疲れにくい」という特性がもたらす恩恵についても詳述。
さらに、「良好なpcx足つき感で安心の操作性」や、ツーリングの利便性を格段に向上させる「大容量のpcx収納助かる場面が多い」点、これら全てが統合された「pcx長距離快適走行を可能にする設計思想」まで、PCXの持つポテンシャルを徹底解剖します。
しかし、物事には必ず光と影があるもの。PCXツーリングにおける課題と対策にも真正面から向き合います。
「pcx加速不満を感じる登坂路や高速」での具体的なシチュエーションや、「高速走行ではpcx風圧きついとの声」がなぜ上がるのかを分析。
その上で、「pcx風よけ効果を高めるカスタムとは」何か、そして「カスタム次第でpcx疲れにくい仕様に」するための具体的な手法を提案します。
最終的に、総括としてPCXツーリングの魅力と注意点を網羅的にまとめることで、あなたがPCXと共に最高のツーリング体験を創造するためのお手伝いをします。
この記事を読み終える頃には、PCXツーリングへの漠然とした不安は確信へと変わり、次の週末の計画を立て始めていることでしょう。
- PCXがツーリングで「快適」と評価される具体的な理由とその技術的背景
- 多くのライダーがツーリング中に「きつい」と感じる点の原因と、その根本的な解決策
- 初心者からベテランまで実践できる、より快適なツーリングを実現するための効果的なカスタム方法
- 総合的なメリット・デメリットを客観的に分析した、PCXのリアルなツアラー性能
PCXツーリングの快適性を支える特徴
- 快適なPCXは乗り心地良いと評判
- エンジンからのpcx振動少ない点も魅力
- pcx静音性高いので疲れにくい
- 良好なpcx足つき感で安心の操作性
- 大容量のpcx収納助かる場面が多い
- pcx長距離快適走行を可能にする設計
快適なPCXは乗り心地良いと評判
風オリジナル
PCXでのツーリングを語る上で、多くのライダーが真っ先に挙げるのが、クラスを超えたと評されるその卓越した乗り心地です。
単に「柔らかい」とか「フワフワしている」といった単純なものではなく、路面の情報を適度に伝えつつも、不快な衝撃はしっかりと吸収する、上質で安定感のある乗り味がPCXの大きな魅力となっています。
この優れた乗り心地は、単一のパーツによるものではなく、フレーム、サスペンション、そしてホイールといった車体を構成する各要素が、絶妙なバランスで連携することによって実現されています。
乗り心地の土台となる「高剛性ダブルクレードルフレーム」
PCXの乗り心地の根幹を支えているのが、スクーターとしては贅沢とも言える「ダブルクレードルフレーム」の採用です。
一般的なスクーターに多い「アンダーボーンフレーム」が、メインパイプ1本で車体を構成するのに対し、ダブルクレードルフレームは、エンジンを左右2本のパイプでゆりかご(クレードル)のように抱え込む構造を持っています。
ホンダの公式サイトによれば、このフレーム形式はねじれ剛性に優れ、走行中の車体のブレや歪みを大幅に抑制します。
これにより、高速走行時やコーナリング中でも車体が安定し、ライダーは安心して操作に集中できます。
ツーリング中に遭遇する荒れた路面や、路面のうねりを乗り越える際にも、車体がヨレる感覚が少ないため、精神的な疲労が軽減されます。
まさに、快適な長距離走行を実現するための、見えない土台の役割を果たしているのです。
専門用語解説:フレーム形式の違い
- アンダーボーンフレーム: 主にビジネスバイクや小型スクーターで採用。
フロアがフラットにできるため実用性に優れる一方、構造上、剛性を高めにくい側面があります。 - ダブルクレードルフレーム: スポーツバイクにも採用される高剛性なフレーム形式。
PCXでは、この高剛性フレームとスクーターの利便性を両立させている点が特徴です。
路面からの入力を巧みにいなすサスペンション
高剛性なフレームが受け止めた路面からの入力は、次にサスペンションによって吸収・減衰されます。
PCXはフロントに正立テレスコピック式フォークを、リアにはユニットスイング式サスペンションを採用しています。
特にリアサスペンションは、現行モデル(JK05/KF47)においてストローク量(サスペンションが伸縮する長さ)が90mmに延長されており、従来モデルよりもさらに路面追従性と衝撃吸収性が向上しました。
この適切に設定されたサスペンションが、細かな凹凸をしなやかにいなし、大きな段差を乗り越えた際の突き上げ感をマイルドにしています。
結果として、長時間のライディングでも体への負担が少なく、快適な状態を維持しやすくなっています。
安定性の要「大径14インチホイール」の秘密
PCXの直進安定性を語る上で、前後14インチという大径ホイールの存在は欠かせません。
一般的な125ccクラスのスクーターが12インチホイールを採用することが多い中、この大径ホイールがもたらすメリットは絶大です。
一つは、ホイール径が大きいことによる「ジャイロ効果」の増大です。
ジャイロ効果とは、回転する物体がその姿勢を保ち続けようとする力のことで、ホイールが大きく重いほど強く働きます。
これにより、PCXは直進時にビシッと安定し、ライダーはハンドルに軽く手を添えているだけで、安心して前方の景色に集中できます。
もう一つのメリットは、ギャップ走破性の高さです。
同じ深さの穴や段差があっても、ホイール径が大きい方が緩やかな角度で乗り越えることができるため、車体の挙動が乱れにくく、乗り心地もスムーズになります。
これらの要素が組み合わさることで、PCXは他の小型スクーターとは一線を画す、堂々とした安定感のある走りを提供してくれるのです。
乗り心地を支える3つの柱
- 高剛性フレーム:走行中の車体のブレを抑え、絶対的な安定感を生み出す。
- しなやかなサスペンション:路面からの不快な衝撃を吸収し、快適性を向上させる。
- 大径ホイール:優れた直進安定性とギャップ走破性で、ライダーに安心感を与える。
長距離の課題となる「シートの硬さ」とその対策
これほどまでに優れた車体を持つPCXですが、多くのライダーから唯一とも言えるウィークポイントとして指摘されるのが「標準シートの硬さ」です。
デザイン性を重視したやや薄めのシートは、短時間の街乗りでは問題ありませんが、2~3時間を超える連続走行になると、お尻の一点に圧力が集中し、「尻痛」を引き起こすことがあります。
しかし、この問題は後付けのパーツで効果的に対策することが可能です。
- 対策①:ゲル内蔵シートクッション(通称:ゲルザブ)の活用
最も手軽な対策が、シートの上に装着するクッションの利用です。
特に医療用としても使われるゲル素材を内蔵したクッションは、体圧分散効果が非常に高く、お尻への負担を大幅に軽減します。
取り付けも簡単でコストも比較的安価ですが、夏場は蒸れやすかったり、製品によっては乗降時にズレやすいといったデメリットもあります。 - 対策②:カスタムシートへの交換
より根本的な解決策を求めるなら、シート自体の交換がおすすめです。
ENDURANCE(エンデュランス)やKITACO(キタコ)といったパーツメーカーから、純正よりもウレタンが厚く、座面が広いコンフォートタイプのシートが販売されています。
長距離走行での快適性が劇的に向上するだけでなく、デザインの変更も楽しめるのが魅力です。価格は高めになりますが、投資する価値は十分にあると言えるでしょう。 - 対策③:バックレストの装着
直接的な尻痛対策ではありませんが、腰を支えるバックレストを装着することも疲労軽減に繋がります。
腰が固定されることで正しいライディングポジションを維持しやすくなり、腰痛の予防になるだけでなく、結果的にお尻にかかる負担の分散にも貢献します。
シートカスタムの注意点
シートを交換する際は、乗り心地だけでなく「足つき性」が変化する場合がある点に注意が必要です。
特に座面が厚くなるコンフォートタイプのシートは、足つきが若干悪化する可能性があります。
ローダウンシートと呼ばれる足つき性を向上させる製品もあるため、ご自身の体格や優先順位に合わせて慎重に選ぶことが重要です。
エンジンからのpcx振動少ない点も魅力
長時間のツーリングにおいて、ライダーの疲労をじわじわと蝕んでいく要因の一つが、エンジンから伝わる「振動」です。
特にハンドルバーやシート、ステップから伝わる微細な振動は、血行を阻害し、手足の痺れや肩こり、集中力の低下を引き起こします。
その点において、PCXはクラス最高水準の低振動性を誇り、この「見えない快適性能」が長距離ツアラーとしての資質を大きく高めています。
この驚くほどスムーズなフィーリングは、ホンダの先進的なエンジン技術の結晶と言えるでしょう。
低振動の心臓部「eSP+(イーエスピープラス)エンジン」の技術
PCXに搭載されている水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒エンジン「eSP+」は、出力性能の向上だけでなく、徹底したフリクション(摩擦抵抗)の低減が追求されています。
この低フリクション化こそが、低振動を実現する上での鍵となっています。
具体的には、以下のような技術が投入されています。
- オフセットシリンダー:ピストンが上下運動する際の、シリンダー側面への圧力を低減し、ポンピングロス(ピストン下降時にクランクケース内の空気を圧縮してしまうことによる抵抗)を減らす技術。
これにより、スムーズなピストン運動を実現しています。 - ローラーロッカーアーム:カムシャフトとバルブの間で作動するロッカーアームに、転がり抵抗の少ないローラー(ベアリング)を採用。摺動抵抗を大幅に減らし、滑らかなバルブ開閉を可能にしています。
- 油圧式カムチェーンテンショナーリフター:エンジンの回転変動に応じて、カムチェーンの張りを常に適切に保つ機構。不要な振動や騒音の発生を抑制します。
これらの地道な技術の積み重ねにより、エンジン内部で発生する振動の源そのものが極限まで抑え込まれているのです。
特に、ツーリングで多用することになる中速域での巡航時には、まるでモーターで走っているかのような滑らかさを感じさせるほどで、ライダーは振動によるストレスから解放され、運転に集中することができます。
専門用語解説:eSP+(イーエスピープラス)とは?
「eSP」は “Enhanced Smart Power” の略で、ホンダが主に小型スクーター向けに開発した、環境性能と動力性能を両立させる低燃費エンジン技術の総称です。
現行の「eSP+」は、従来の2バルブから4バルブ化(吸気・排気のバルブをそれぞれ2つに増やす)するなど、さらなる高出力化と環境性能の向上を果たした進化版エンジンを指します。
不快な振動を吸収するラバーマウント
エンジン本体で発生する振動を抑えるだけでなく、その振動を車体やライダーに伝えないための工夫も凝らされています。
エンジンをフレームに懸架(マウント)する部分には、ラバー(ゴム)ブッシュが効果的に用いられています。
このラバーマウントが緩衝材の役割を果たし、エンジンで発生した微細な振動を吸収。
ハンドルバーやシート、ステップといったライダーの体に直接触れる部分への振動伝達を大幅に低減しています。
これにより、長時間ハンドルを握っていても手が痺れにくく、ツーリング後の疲労感が大きく異なるという声が多く聞かれます。
高回転まで回した際には、単気筒エンジンならではの心地よいパルス感(鼓動感)は伝わってきますが、それは「不快な振動」ではなく「バイクを操る楽しさ」を感じさせるものであり、このあたりの味付けの上手さもホンダならではと言えるでしょう。
アイドリングストップ・システムがもたらす「無振動」の快適性
PCXの快適性をさらに際立たせているのが、標準装備の「アイドリングストップ・システム」です。
停車後3秒でエンジンが自動的に停止し、スロットルを開けると瞬時に再始動するこのシステムは、燃費性能の向上に貢献するだけでなく、「停車中の振動と騒音を完全にゼロにする」という大きなメリットをもたらします。
ツーリング中は、信号待ちや渋滞、景色の良い場所での小休止など、停車する機会が意外と多いものです。
その都度、エンジンが静かに停止することで、アイドリング中の微振動から完全に解放され、精神的なリフレッシュにも繋がります。
再始動時も、セルの回る音がほとんどしない「ACGスターター」により、驚くほどスムーズかつ静か。この一連の洗練された動作が、PCXの持つ上質感をさらに高めています。
低振動を実現するテクノロジー
- 低フリクション設計の「eSP+」エンジン:エンジン内部の摩擦を徹底的に低減し、振動の発生源を抑制。
- 効果的なラバーマウント:エンジンから車体への振動伝達を遮断し、ライダーへの影響を最小化。
- アイドリングストップ・システム:停車中の振動と騒音をゼロにし、快適性と静粛性を両立。
このように、PCXの低振動性は、単一の機能によるものではなく、エンジン設計から車体構造、電子制御システムまで、多岐にわたる技術が統合されることで実現されています。
この「乗ればわかる快適さ」こそが、PCXをツーリングパートナーとして選びたくなる、大きな理由の一つなのです。
pcx静音性高いので疲れにくい
ツーリングにおける疲労の原因は、身体的なものだけではありません。
長時間にわたって耳に届くエンジン音や排気音、風切り音といった「騒音」は、ライダーが意識しないうちに聴覚を刺激し続け、精神的な疲労、いわゆる「音疲れ」を引き起こします。
この点において、PCXはクラスを代表する優れた静粛性を備えており、ライダーをこの音疲れから解放してくれます。
静かであることは、単に快適なだけでなく、安全なライディングにも繋がる重要な性能なのです。
ジェントルなサウンドを奏でる吸排気システム
PCXの静粛性の高さは、まずその巧妙に設計された吸排気システムに起因します。
エンジンが空気を吸い込む吸気系には、大容量のエアクリーナーボックスが備えられています。
これは、エンジンが必要とする空気を安定して供給する役割だけでなく、吸気時に発生する「吸気音」を効果的に低減する消音器(サイレンサー)としての機能も果たしています。
一方、燃焼後のガスを排出する排気系に目を向けると、こちらも容量の大きなマフラーが装備されています。
内部が複雑な多段膨張室構造となっており、排気ガスがこの部屋を通過する過程で、排気圧力が段階的に低下し、高音域の破裂音が効率的に消音されます。
これにより、排出されるサウンドは非常にジェントルで角の取れた、耳障りの良いものとなります。
その結果、PCXは加速時でも品のある落ち着いたサウンドを保ち、巡航時にはエンジン音が風切り音に紛れるほど静かになります。
この静かさが、長距離ツーリングにおけるライダーの集中力維持に大きく貢献し、結果として疲労を軽減させるのです。
静粛性と動力性能の両立
一般的に、吸排気効率を高めてパワーを追求すると、騒音は大きくなる傾向にあります。
PCXの開発においては、流体解析技術などを駆使することで、騒音を抑えつつも、吸排気抵抗を低減し、スムーズな出力特性を実現しています。
この「静かさ」と「パワー」という相反する要素を高い次元で両立させている点に、ホンダの技術力の高さが表れています。
静粛性がもたらすツーリングでの具体的なメリット
- 自然との一体感を高める風光明媚な海岸線や、緑豊かな山道を走る際、過度なエンジン音は周囲の環境音をかき消してしまいます。
PCXの静かさであれば、風の音、鳥のさえずり、小川のせせらぎといった自然のサウンドをBGMに、景色と一体になるような穏やかで質の高いツーリング体験が可能です。
これは、大排気量バイクの迫力あるサウンドとはまた違った、PCXならではの大きな魅力と言えるでしょう。 - インカムでの会話がクリアに近年、仲間とのツーリングでインカム(ヘルメットに取り付ける無線通話装置)を使用するライダーが増えています。
エンジン音や排気音が大きいと、インカムの音量を上げないと相手の声が聞き取りにくく、結果として耳への負担が増大します。
PCXの静粛性は、インカムの音量を最小限に抑えてもクリアな会話を可能にし、タンデム(二人乗り)時においても、パッセンジャーとの自然なコミュニケーションを助けてくれます。 - 周囲への配慮とストレスフリーな出発・帰宅ツーリングに出かける早朝や、遊び疲れて帰宅する深夜。
住宅街でのエンジン始動や走行は、何かと気を使うものです。
PCXであれば、その静かなエンジン音とアイドリングストップ機能により、近隣への騒音を最小限に抑えることができます。
こうした「気兼ねのなさ」は、ライダーにとって精神的なストレスを軽減し、ツーリングの純粋な楽しさを高めてくれる要素となります。
静かすぎることのデメリット?
PCXの静粛性は大きな美点ですが、一方で「静かすぎて歩行者や他の車両に存在を気付かれにくい」という側面も指摘されます。
特に、見通しの悪い交差点や、路地から出る際などには、自車の存在をアピールするために、早めのヘッドライト点灯や、必要に応じた警音器(ホーン)の使用を心がけるなど、より一層の防衛運転が求められます。
静かさは、安全運転への意識を高めるきっかけとも言えるでしょう。
総じて、PCXの静粛性は、単に「静かである」という事実以上に、ツーリングの質そのものを向上させ、ライダーの疲労を多角的に軽減する重要な性能です。
この快適性を一度体験すると、他のバイクに乗った際にそのありがたみを再認識させられる、PCXの隠れた、しかし強力な武器なのです。
良好なpcx足つき感で安心の操作性
ツーリングの楽しさは、景色の良い道を快走している時だけではありません。
目的地での散策、信号待ち、駐車場の取り回しといった、バイクを停止させたり、極低速で動かしたりする場面もツーリングの一部です。
こうしたシチュエーションでライダーの安心感を大きく左右するのが「足つき性」です。
PCXは、スペック上のシート高以上に良好な足つき感を提供し、それがライダーの精神的な余裕に繋がり、結果としてツーリング全体の質を高めています。
この安心感の源は、計算され尽くしたシート形状と、車両全体の低重心設計にあります。
スペック値以上に良好な足つきを生むシートデザイン
PCXのシート高は、現行モデル(JK05/KF47)で764mmと公表されています。
この数値は125cc~160ccクラスのスクーターとしては平均的なものですが、多くのライダーが「スペックよりも足つきが良い」と感じるのは、その巧妙なシート形状に理由があります。
PCXのシートは、ライダーが着座する部分から前方にいくにしたがって、左右の角が大きく絞り込まれたデザインになっています。
これにより、停車時に足を下ろす際、太ももの内側がシートに干渉しにくく、足をまっすぐ地面に向かって伸ばすことができます。
結果として、同じシート高のバイクであっても、シート幅が広いモデルに比べて、より深く、確実にかかとを接地させることが可能になるのです。
この設計は、特に信号待ちで片足を着く際や、少し傾斜のある場所で停車する際に大きな安心感をもたらします。
不意にバランスを崩しそうになった時でも、サッと足を出して車体を支えやすいため、立ちゴケのリスクを大幅に低減してくれます。
体格による個人差と事前の確認の重要性
シート前方が絞り込まれているとはいえ、PCXは車格がしっかりしているため、シート全体の幅はそれなりにあります。
そのため、特に身長160cm未満の方など、小柄なライダーからは「もう少し足つきが良いと嬉しい」という声も聞かれます。
バイクの購入を検討する際は、必ず販売店で実車にまたがり、両足がどの程度接地するか、車体を支えるのに不安がないかを自分の体で確認することが極めて重要です。
低重心設計がもたらす磐石の安定感
良好な足つき性に加え、PCXの安心感を支えるもう一つの柱が「低重心設計」です。
PCXは、重量物であるエンジンや燃料タンクを可能な限り低い位置にレイアウトしています。
これにより、車両の重心が低く抑えられ、停車時や極低速走行時の安定感が飛躍的に向上しています。
重心が高いバイクは、少し傾いただけでもグラっと大きくバランスを崩しやすいのに対し、低重心のPCXは振り子のように安定した状態に戻ろうとする力が働きます。
この特性は、以下のようなツーリングの具体的な場面で大きなメリットとなります。
- Uターン:ツーリング中に道を間違えた際など、狭い場所でのUターンは緊張するものです。
低重心なPCXは低速でのふらつきが少なく、安心してハンドル操作に集中できます。 - 渋滞路でのノロノロ運転:ストップ&ゴーを繰り返す渋滞路でも、車体が安定しているため精神的な疲労が少なくて済みます。
- 駐車場の取り回し:バイクから降りて押し歩きをする際も、車重(JK05で132kg)の数値以上に軽く感じられ、楽に取り回すことができます。
この「足つきの良さ」と「低重心」という二つの要素が相乗効果を生むことで、PCXはライダーに対して常に高い安心感を提供し、ツーリング中のあらゆる場面でのストレスを軽減してくれるのです。
身長別足つき感の目安(詳細版)
より具体的なイメージを持つための参考として、身長別の足つき感の目安を以下に示します。
身長 | 足つきの目安 | 安心感のレベル |
---|---|---|
160cm未満 | 両足のつま先が接地する程度。バレリーナ状態になることも。 | △:少し慣れが必要。ローダウンカスタムを検討するのも一手。 |
165cm前後 | 両足の母指球(足の親指の付け根)あたりまでしっかりと接地。 | ◎:ほとんどの状況で不安なく車体を支えられる。 |
170cm前後 | 両足のかかとまでベッタリと接地する場合が多い。 | ◎◎:磐石の安心感。取り回しに全く不安を感じないレベル。 |
175cm以上 | かかとが接地し、膝に余裕ができる。 | ◎◎:ポジションの自由度も高く、非常に快適。 |
※上記はあくまで一般的な目安であり、股下の長さや体重によるサスペンションの沈み込みによっても変わります。必ず実車でご確認ください。
バイクの操作に慣れていない初心者ライダーはもちろん、ベテランライダーにとっても、この扱いやさしさは大きなアドバンテージとなります。
余計な緊張から解放されることで、よりツーリングそのものを楽しむ心の余裕が生まれる。
それこそが、PCXの提供する「安心の操作性」が持つ、本当の価値なのかもしれません。
大容量のpcx収納助かる場面が多い
ツーリングに出かける際、ライダーを悩ませるのが「荷物をどうするか」という問題です。
リュックサックを背負うと肩が凝り、タンクバッグは乗降時に邪魔になることも。
その点、PCXはスクーターならではの圧倒的な収納力を備えており、ライダーを荷物の悩みから解放してくれます。
この優れた積載性は、日帰りツーリングから、工夫次第ではキャンプツーリングまで、あらゆる旅のスタイルをスマートに、そして快適にサポートしてくれる強力な武器となります。
クラス最大級を誇るシート下ラゲッジスペース
PCXの収納力を象徴するのが、シート下に広がる大容量のラゲッジスペースです。
現行モデル(JK05/KF47)では、その容量は30リットルにも達します。
これは、同クラスのスクーターの中でもトップクラスの広さであり、その恩恵は計り知れません。
最も大きなメリットは、多くのフルフェイスヘルメットをシート下に収納できる点です(ヘルメットの形状やサイズによっては収納できない場合もあります)
これにより、ツーリング先で観光地を散策したり、食事をしたりする際に、高価なヘルメットを持ち歩く必要がなくなります。
ヘルメットホルダーにぶら下げて盗難や傷の心配をする必要もなく、安心してバイクから離れることができるのです。
日帰りツーリングにおいては、この30Lという容量は絶妙なサイズ感です。
例えば、以下のようなアイテムを同時に収納することも可能です。
-
- レインウェア上下(突然の雨に備える必需品)
- 防寒用のインナージャケットやフリース(山間部の気温変化に対応)
– 500mlペットボトル飲料 2本
- ツーリング先で購入したお土産
- タオル、モバイルバッテリーなどの小物類
これらの荷物をすべてシート下に収めることができれば、リュックサックを背負うことなく、身軽で開放的なライディングが楽しめます。
肩や背中への負担がなくなるため、長距離走行後の疲労感が全く違うものになります。
ラゲッジスペースを上手に使うコツ
PCXのラゲッジスペースは、後方に向かって深くなっている形状をしています。
この形状を理解し、重いものや硬いもの(例:工具、水の入ったボトル)を前方(低い位置)に、軽くて柔らかいもの(例:衣類)を後方(高い位置)に積めることで、重心バランスを崩しにくく、走行安定性を損なわずに収納できます。
痒い所に手が届くフロント周りの収納と機能
メインのラゲッジスペースに加え、フロント(ハンドル下)の収納もPCXの利便性を高めています。
左側には蓋付きのインナーボックスが設けられており、グローブやタオル、スマートフォンといった、すぐに取り出したい小物を収納しておくのに便利です。
現行モデルでは、このボックス内に「USB Type-Cソケット」が標準装備されている点が大きなトピックです。
これにより、スマートフォンをナビゲーションとして使用しながら、常に充電し続けることが可能になります。
モバイルバッテリーを別途用意したり、残量を気にしながら走ったりする必要がなく、ツーリングの快適性と安全性が飛躍的に向上します。
ケーブルを繋いだまま蓋を閉めることができる設計になっているのも、嬉しい配慮です。
さらなる拡張性:リアボックスによる積載能力の最大化
数日間にわたる長期ツーリングや、テントや寝袋が必要になるキャンプツーリングに挑戦する場合、さすがに標準の収納だけでは容量が不足します。
しかし、PCXはオプションのリアキャリアを装着することで、リアボックス(トップケース)を簡単に追加でき、積載能力を劇的に向上させることが可能です。
市場には様々なメーカーからPCX専用のキャリアや、汎用のリアボックスが販売されています。
一般的に人気が高いのは30L~48Lクラスのボックスです。
リアボックス容量 | 収納できる荷物の目安 | おすすめのツーリングスタイル |
---|---|---|
30L~35L | ヘルメット1個+α。日帰り~1泊程度の着替えや雨具。 | 日帰り、ビジネスユース、1泊2日のショートツーリング |
40L~48L | ヘルメット2個、またはテント・シュラフなどのキャンプ用品一式。 | 2泊以上のロングツーリング、キャンプツーリング |
例えば、43Lのリアボックスを追加した場合、シート下の30Lと合わせると合計73Lもの広大な収納スペースが生まれます。
これは、大型ツアラーバイクにも匹敵する積載量であり、「PCXで日本一周」といった壮大な旅も、決して夢物語ではないことを示しています。
荷物が多くなっても、重心が比較的高い位置に集中するリアボックスの特性を理解し、重量バランスに配慮して積載すれば、安定した走行が可能です。
このように、標準状態での高い収納力と、カスタムによる優れた拡張性を両立している点こそが、PCXがツーリングライダーから絶大な支持を集める理由なのです。
pcx長距離快適走行を可能にする設計
PCXが多くのライダーから「長距離でも快適に走れる」と評価されるのは、これまで述べてきた乗り心地、低振動性、静粛性といった個別の要素が優れているからだけではありません。
それ以上に重要なのは、車両全体が「快適な長距離移動」という目的のために、一貫した思想のもとに設計されているという点です。
その設計思想は、ライダーの疲労をミニマイズし、どこまでも走り続けたくなるようなフィーリングを生み出すための、数々の緻密な計算と工夫に支えられています。
ここでは、その設計思想を体現する3つの重要な柱について、さらに深く掘り下げていきます。
① 驚異的な航続距離がもたらす「精神的余裕」
長距離ツーリングにおいて、給油は走行リズムを中断させるだけでなく、「次のガソリンスタンドはどこだろう?」という小さな不安を常にライダーに抱かせます。
特に、ガソリンスタンドが少ない山間部や郊外を走る際には、この不安が精神的なストレスとなり、純粋に走りを楽しむことを妨げます。
PCXは、この問題を根本から解決する驚異的な航続性能を備えています。
その秘密は、優れた燃費性能と大容量燃料タンクの組み合わせにあります。
PCXのエンジンは、前述の低フリクション技術に加え、精密な燃料噴射制御(PGM-FI)により、極めて効率的な燃焼を実現しています。
国土交通省届出値であるWMTCモード値(※)において、PCX(125cc)は48.8km/L、PCX160でも43.7km/Lという非常に優れた数値を記録しています。(参照:本田技研工業株式会社 PCX主要諸元)
これに、クラス最大級の8.1L大容量燃料タンクが組み合わさることで、単純計算上の航続距離はPCX(125cc)で約395km、PCX160で約354kmにも達します。
実際の走行ではもう少し短くなるとしても、一度の給油で300km~350kmを無給油で走り切れることは、ツーリングにおいて絶大なアドバンテージとなります。
これは、東京から名古屋までの距離に匹敵し、日帰りツーリングであれば、出発時に満タンにしておけば、帰宅するまで一度も給油の心配をしなくて済むケースも少なくありません。
この「給油からの解放」がもたらす精神的な余裕こそが、快適な長距離走行の基盤となるのです。
専門用語解説:WMTCモード値とは?
WMTC(Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycle)モードとは、国連のワーキンググループが策定した、世界で統一された二輪車の燃費測定基準です。
市街地、郊外、高速道路といった、実際の走行シーンを想定した様々なパターンで測定されるため、ライダーの実感に近い、より現実的な燃費の指標とされています。
② ライダーを包み込む「リラックス・ライディングポジション」
長時間の運転では、無理のない自然なライディングポジションを維持できるかどうかが、疲労度に大きく影響します。
窮屈な姿勢は、特定の筋肉に負担をかけ、肩こりや腰痛の原因となります。
PCXは、この点においても非常によく考えられた設計がなされています。
まず、広々としたフラットなフロアステップが特徴的です。
これにより、足を置く位置の自由度が非常に高く、巡航中に足を前方に投げ出したり、少し後ろに引いたりといった姿勢の変更が容易に行えます。
同じ姿勢を長時間続けることによるエコノミー症候群のリスクを低減し、体をリフレッシュさせることができます。
また、高すぎず低すぎない、自然な高さに設定されたアップライトなハンドルポジションは、上半身がリラックスした状態で起きた姿勢を保つことを可能にします。
これにより、腕や肩にかかる負担が少なく、視線も自然と遠くに向くため、安全確認がしやすく、景観を楽しむ余裕も生まれます。
このライダーを優しく包み込むようなポジション設定が、何時間でも走り続けられる快適さを生み出しているのです。
③ 安定感と軽快感を両立した車体パッケージ
PCXの設計思想を語る上で欠かせないのが、「安定感」と「軽快感」という、時に相反する要素を高い次元で両立させている点です。
これまで述べてきた高剛性フレームや大径ホイールがもたらす「どっしりとした安定感」は、長距離巡航時の疲労を軽減します。
一方で、132kgという軽量な車体と、コンパクトにまとめられたマス(質量)は、スクーター本来の「ひらりひらりとした軽快なハンドリング」をもたらします。
これにより、ツーリング中のシチュエーションに応じて、PCXは二つの顔を見せます。
流れの速いバイパスでは、その安定性を活かしてリラックスしたクルージングを。
そして、目的地の周辺や、景色の良いワインディングロードに入れば、その軽快性を活かしてバイクを操る楽しさを存分に味わうことができます。
この「一台で二度美味しい」とも言える二面性のあるキャラクターが、長距離ツーリングを単調な移動に終わらせず、飽きのこない豊かな体験へと昇華させてくれるのです。
これらの設計思想が統合された結果、PCXは単なるパーツの集合体ではなく、「快適な長距離走行」という明確な目的を持つ、洗練された一つのシステムとして機能します。
それこそが、PCXが多くのツーリングライダーに選ばれ続ける、本質的な理由と言えるでしょう。
PCXツーリングにおける課題と対策
- pcx加速不満を感じる登坂路や高速
- 高速走行ではpcx風圧きついとの声も
- pcx風よけ効果を高めるカスタムとは
- カスタム次第でpcx疲れにくい仕様に
pcx加速不満を感じる登坂路や高速
ここまでPCXの数多くの美点を挙げてきましたが、万能なバイクが存在しないように、PCXにも得意としないシチュエーションがあります。
その代表格が、急勾配が続く登坂路や、PCX160における高速道路での高負荷走行です。
街乗りでは十分以上に感じられた動力性能も、ツーリングという非日常の舞台では、時に「力不足」という形でライダーに課題を突きつけます。
この課題を正しく理解し、バイクの特性に合わせた運転を心がけることが、安全で楽しいツーリングの鍵となります。
排気量の限界:なぜパワー不足を感じるのか
PCXのエンジンは、125ccまたは160ccという小排気量の中で、最大限の効率と性能を発揮するように設計されています。
しかし、物理的な排気量の差は絶対的なものであり、250ccや400cc、あるいはそれ以上の大排気量バイクが持つような、有り余るトルク(回転力)やパワー(馬力)は備えていません。
バイクが坂道を登る際には、平坦な道を走る時よりも大きな力(駆動トルク)が必要になります。
小排気量のPCXは、この要求される力に対して、エンジンの持つ力が相対的に小さいため、どうしても速度の低下を招きやすくなります。
特に、ライダーの体重、積載した荷物の重さ、そして坂道の勾配という3つの要素が重なると、パワー不足はより顕著に感じられることになります。
同様に、PCX160で高速道路を走行する場合、空気抵抗は速度の二乗に比例して増大します。
時速100kmでの走行は、エンジンを高回転で回し続ける、非常に負荷の高い状態です。
この状態でさらなる加速(追い越しなど)を試みても、エンジンには余力がほとんど残されておらず、ライダーが期待するような鋭い加速は得られないのです。
具体的な「加速不満」を感じるシチュエーション
ツーリング中に、ライダーが具体的に「もっとパワーがあれば…」と感じるのは、主に以下のような場面です。
- 山間部のワインディングロード:箱根や伊豆、信州などの山岳ルートでは、カーブで減速した後の再加速や、長い上り坂が連続します。
こうした場面では、アクセルを大きく開けても思うようにスピードが乗らず、後続に車両がいる場合はプレッシャーを感じることがあります。 - 自動車専用道やバイパスへの合流:本線の速い流れに乗るためには、合流車線で一気に加速する必要があります。
特に上り坂になっている合流車線では、十分な速度まで加速しきれずに合流することになり、危険を伴う可能性があります。 - PCX160での高速巡航と追い越し:時速100kmでの巡航自体は可能ですが、エンジンは常に唸りを上げている状態に近くなります。
走行車線を走る大型トラック(通常80km/h~90km/hで走行)を追い越そうとする際には、追い越し車線に出てから抜き去るまでに長い時間と距離を要し、後方から来る速い車両に追いつかれてしまうリスクがあります。 - 二人乗り(タンデム)での走行:乗車重量が単純に増加するため、あらゆる場面で加速性能は低下します。
特に登坂性能への影響は大きく、平坦な道では問題なくとも、少しの坂道で速度が大きく落ち込むことを覚悟しておく必要があります。
パワー不足への対処法と心構え
これらの課題は、PCXの欠点というよりも、その排気量クラスが持つ生来の特性です。
重要なのは、この特性を理解した上で、無理のない運転計画を立てることです。
- 速度維持を心がける:登坂路では、手前で十分に助走をつけ、可能な限り速度を落とさずに登り切ることを意識します。
- 無理な追い越しはしない:特に高速道路では、左側の走行車線をキープし、流れに乗って淡々と走る「省エネ走行」に徹するのが最も安全で快適です。追い越しは、前方が完全にクリアで、十分な距離がある場合に限定しましょう。
- ルート選定の工夫:時間に余裕があるなら、あえて勾配の厳しい峠道を避け、比較的平坦な迂回ルートを選ぶのも賢明な判断です。
駆動系のカスタムによる改善の可能性
ハードウェアの面から加速性能を改善したい場合、駆動系パーツのカスタムという選択肢もあります。
スクーターの変速を司るプーリーやウェイトローラー、クラッチといった部品を、社外品のハイスピードプーリーキットなどに交換することで、変速のタイミングを変化させ、加速重視のセッティングにすることが可能です。
これにより、発進加速や中間加速を鋭くすることができますが、一方で最高速が若干低下したり、燃費が悪化したり、エンジン回転数が常に高めになることで振動や騒音が増加するといったデメリットも生じる可能性があります。
カスタムを行う際は、こうしたトレードオフを十分に理解し、信頼できるバイクショップに相談の上で実施することが推奨されます。
結論として、PCXの動力性能は、その排気量クラスを考えれば非常に優秀ですが、万能ではありません。
ツーリングにおいては、その限界点をライダー自身が把握し、バイクに過度な要求をせず、対話するように走らせることが、最もスマートで楽しい付き合い方と言えるでしょう。
高速走行ではpcx風圧きついとの声も
PCXのツーリング性能を語る上で、動力性能と並んでしばしば課題として挙げられるのが、高速走行時における「走行風との戦い」です。
PCXには、デザイン性に優れたショートタイプのウインドスクリーンが標準で装備されていますが、その整流効果は主に胸元あたりまでに限定されます。
そのため、速度が上がるにつれて、ライダーの上半身、特に肩から上には強烈な風圧が直接当たり続けることになります。
この絶え間ない風圧が、ライダーの体力を奪い、疲労を蓄積させる大きな原因となるのです。
風圧がライダーに与える物理的・精神的影響
高速走行中にライダーが受ける風圧は、想像以上に大きなエネルギーを持っています。
例えば、時速80kmで走行している際、ライダーが受ける風の力は、時速40kmの時の実に4倍にもなります。
この強大な力に抗して姿勢を維持するため、ライダーは首や肩、背中の筋肉を常に緊張させ続ける必要があり、これが深刻な疲労に繋がります。
具体的には、以下のような影響が現れます。
- 体力の消耗:風圧に耐えるために無意識に筋肉が緊張し続けることで、エネルギーを消耗し、体力を著しく奪われます。
長時間の高速巡航後には、まるでスポーツをした後のような疲労感を感じることも少なくありません。 - 体温の低下:特に気温の低い季節には、走行風が体温を容赦なく奪っていきます。
体温が低下すると、体の動きが鈍くなり、判断力も低下するため、安全運転に支障をきたすリスクが高まります。 - 集中力の低下:ヘルメットに当たる風切り音の増大や、風によるヘルメットのブレは、ライダーの集中力を散漫にさせます。
「バタバタ」という騒音に長時間さらされることは、前述の「音疲れ」にも直結します。 - 精神的なストレス:常に風と戦っている状態は、リラックスしたライディングを妨げ、精神的なストレスを増大させます。
これが「高速道路は疲れるから走りたくない」と感じる大きな要因となります。
これらの複合的な要因により、「風圧がきつい」という感覚は、単なる不快感にとどまらず、ツーリング全体の安全性と快適性を大きく損なう問題となるのです。
横風への脆弱性:軽量な車体ゆえの課題
正面から受ける風圧に加え、PCXのツーリングにおいては「横風」への注意も必要です。
PCXの車体重量は132kgと、バイク全体で見れば非常に軽量な部類に入ります。
この軽さが取り回しの良さや軽快なハンドリングに貢献している一方で、強い横風を受けた際には、車体が流されやすいという脆弱性にも繋がります。
特に、以下のようなシチュエーションでは、予期せぬ横風にハンドルを取られてヒヤッとすることがあります。
特に横風に注意が必要な場所
- 橋の上や海岸線:周囲に風を遮るものがなく、常に強い風が吹き付けていることが多い場所。
- トンネルの出口:トンネル内が無風状態から、出口で突然強烈な横風に煽られることがあり、最も注意が必要なポイントの一つ。
- 切り通しの間:ビルや山の谷間を風が通り抜ける「ビル風」現象により、局所的に強い風が発生することがあります。
- 大型車両の追い越し時:大型トラックなどを追い越す際、トラックの側面を通過している間は風が遮られますが、前に出た瞬間に再び強い風を受けるため、車体が不安定になりやすいです。
スクーターは、その構造上、車体の側面面積が比較的大きいため、風の影響を受けやすいという特性もあります。
横風に煽られた際は、パニックにならず、スロットルを少し戻して減速し、ハンドルをしっかりと保持して車体の立て直しに集中することが重要です。
あらかじめ「横風が来そうだ」と予測して身構えておくだけでも、対処のしやすさは大きく変わります。
この風圧の問題は、PCXに限らず多くのバイクに共通する課題ですが、特に快適性を重視するPCXのキャラクターを考えると、より効果的な対策を講じたいところです。
次項では、この課題を解決するための具体的なカスタム方法について詳しく解説していきます。
pcx風よけ効果を高めるカスタムとは
高速走行時の強烈な風圧や、不意の横風といった課題は、ライダーの工夫と適切なパーツ選択によって、その影響を劇的に軽減させることが可能です。
特にウインドスクリーンを中心とした防風性能を高めるカスタムは、PCXを快適な長距離ツアラーへと進化させる上で、最も費用対効果の高い投資の一つと言えるでしょう。
ここでは、具体的なカスタムパーツの種類とその効果、選び方のポイントについて、詳しく解説していきます。
絶大な効果を発揮する「ロングスクリーン」への換装
走行風による疲労を軽減するための最も直接的かつ効果的な解決策が、標準装備のショートスクリーンを社外品の「ロングスクリーン」に交換することです。
スクリーンを大型化することで、ライダーの体、特に胸からヘルメットにかけてのエリアに直接当たる走行風を、頭上や側方に受け流すことができます
。これにより、前項で述べた風圧による様々な弊害を、根本から解消することが可能になります。
ロングスクリーンの具体的なメリット
- 疲労の劇的な軽減:上半身を風圧から守ることで、無駄な筋力の消耗がなくなり、長距離走行後の疲労感が全く異なります。
リラックスした状態で運転に集中できるため、安全性の向上にも繋がります。 - 優れた防寒性能:冬場のツーリングにおいて、冷たい走行風はライダーの体温を容赦なく奪います。
ロングスクリーンは、この冷風をシャットアウトする「見えない壁」となり、ウインドブレーカーを一枚多く着ているのと同等、あるいはそれ以上の効果を発揮します。 - 雨や虫からの保護:小雨程度であれば、スクリーンが雨粒の直撃を防いでくれます。
また、夏場の夜間走行などで多い、虫の衝突からもライダーを守ってくれるため、快適性が大きく向上します。
ロングスクリーンの選び方と注意点
市場には、ホンダの純正アクセサリーから、GIVI(ジビ)、旭風防、ENDURANCE(エンデュランス)といった様々なメーカーから、多種多様なロングスクリーンが販売されています。
選ぶ際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
ポイント | 解説 | チェック項目 |
---|---|---|
高さ | 最も重要な要素。高すぎると視線がスクリーン越しになり、雨天時や夜間に視界が悪化する可能性が。低すぎると防風効果が薄れます。一般的に、座った状態でスクリーンの上端が鼻から口の高さに来るくらいが、視界と防風性のバランスが良いとされています。 | ・自分の身長とライディングポジションに合っているか ・視界はクリアか、歪みはないか |
素材 | 主流はアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂。アクリルは透明度が高く傷がつきにくいですが、衝撃に弱いという特性があります。一方、ポリカーボネートは戦闘機のキャノピーにも使われるほど耐衝撃性に優れますが、アクリルに比べて高価で、若干傷がつきやすい傾向にあります。 | ・透明度を重視するか、強度を重視するか ・ハードコート処理などで耐傷性が高められているか |
デザイン・色 | クリアタイプが最も一般的で視界も良好ですが、車体を引き締めて見せるスモークタイプや、スポーティーなエアロ形状のデザインも人気です。ご自身のPCXのスタイルに合わせて選ぶ楽しみがあります。 | ・愛車のカラーリングやコンセプトに合っているか |
一昔前は「ロングスクリーンはビジネスバイクのようで格好悪い」というイメージもありましたが、近年の製品はPCXの流麗なデザインに溶け込むように設計されており、機能性だけでなくドレスアップパーツとしての側面も強くなっています。
さらなる快適性を追求する追加パーツ
ロングスクリーンと組み合わせることで、さらに防風性能を高めることができるパーツもあります。
- ナックルバイザー(ハンドガード):ハンドル部分に取り付ける小型の風防です。
走行風が直接手に当たるのを防ぎ、特に冬場の指先の冷たさを大幅に軽減します。
雨天時には、グローブが濡れるのを防ぐ効果もあります。 - レッグシールド/ボディマウントシールド:車体側面に装着し、足元への風の巻き込みを防ぐパーツです。
下半身の冷えを防ぐのに効果的で、ロングスクリーンと併用することで、ほぼ全身を走行風からカバーすることも可能になります。
カスタムは「トータルバランス」で考える
これらの防風カスタムは、一つひとつが大きな効果を発揮しますが、重要なのは自分のツーリングスタイルに合わせて、トータルで考えることです。
例えば、「主に冬場のツーリングでの寒さ対策が目的」であれば、ロングスクリーンとグリップヒーター、ナックルバイザーの組み合わせは最強の防寒仕様となります。
自分の「何が一番つらいのか」を明確にし、優先順位をつけてカスタムプランを練ることで、無駄な出費を抑えつつ、最大限の快適性を手に入れることができるでしょう。
風を制する者は、ツーリングを制す。
PCXの持つポテンシャルを最大限に引き出すためにも、防風対策は、ぜひ最初に取り組んでみたいカスタムの一つです。
カスタム次第でpcx疲れにくい仕様に
ノーマルの状態でも優れたツーリング適性を持つPCXですが、ライダーの体格や走り方、そして旅のスタイルに合わせて適切なカスタムを施すことで、その快適性は飛躍的に向上し、まるで自分の体の一部であるかのような、究極に「疲れにくい仕様」へと昇華させることが可能です。
これまでの項で触れた「尻痛」や「風圧」といった課題への対策はもちろん、ここではさらに一歩踏み込んで、総合的な疲労軽減に繋がるカスタムポイントを体系的にご紹介します。
① ライダーの体に触れる部分の最適化(快適性の向上)
長距離ツーリングで最も負担がかかるのは、常にバイクと接している部分です。
ここの快適性を追求することが、疲労軽減への第一歩となります。
- シートの快適性向上:これは最も重要なカスタムポイントです。
前述の通り、手軽なゲル内蔵クッション(ゲルザブ)の追加は即効性があります。
より根本的な解決を目指すなら、ウレタンの材質や厚み、座面の形状まで考慮された社外品のコンフォートシートへの交換がおすすめです。
さらに、腰をホールドしてくれるバックレストの追加は、長時間のライディングにおける腰痛予防に絶大な効果を発揮し、正しい乗車姿勢の維持を助けてくれます。 - ハンドル周りの快適装備:冬場のツーリングでは、指先のかじかみが安全運転の大きな妨げになります。
これを解決するグリップヒーターは、一度使うと手放せなくなる定番アイテムです。
また、ハンドルバーの振動を軽減するヘビーウェイトタイプのバーエンドに交換するのも、地味ながら手の痺れを抑えるのに効果があります。
② 走行性能と乗り心地の質的向上(安定性の追求)
乗り心地の質を高め、あらゆる路面状況で安定した走行を可能にすることも、疲労軽減に大きく貢献します。
- サスペンションのグレードアップ:標準のサスペンションでも十分な性能を持っていますが、より上質な乗り心地を求めるなら、社外品の高性能リアサスペンションへの交換が有効です。
減衰力調整機能(サスペンションが伸び縮みする際の抵抗を調整する機能)が付いたモデルを選べば、乗車人数や荷物の量、走行ペースに合わせて最適なセッティングを見つけることができ、乗り心地を自在にコントロールできます。
これにより、路面追従性が向上し、コーナリング時の安定感も増します。 - タイヤの選択:タイヤはバイクが唯一、地面と接している重要なパーツです。
標準装着タイヤから、ツーリング向けのコンパウンド(ゴム質)を採用したタイヤに交換することで、乗り心地がマイルドになったり、雨天時のグリップ性能が向上したりと、走りの質を大きく変えることができます。
信頼できるタイヤメーカー(例:ブリヂストン、ダンロップ、ミシュランなど)の製品の中から、自分の使い方に合ったモデルを選びましょう。
③ 利便性の向上と旅のストレス軽減(ユーティリティの拡充)
ツーリング中の小さな不便は、積み重なると大きなストレスになります。
利便性を高める装備は、結果として精神的な疲労を軽減してくれます。
- ナビゲーションシステムの導入:今やツーリングの必需品となったナビゲーション。
スマートフォンホルダーで自身のスマホをナビとして利用するのが最も手軽です。
その際、バッテリー切れを防ぐために、標準装備のUSBソケットとは別に、ハンドル周りにも追加のUSB電源ポートを設置しておくと、他の電子機器(インカムやカメラなど)の充電にも対応でき、非常に便利です。 - 積載能力の最大化:前述の通り、リアキャリアとリアボックスの追加は、積載問題を根本的に解決します。
荷物を背負う必要がなくなるだけで、ライディングの自由度と快適性は劇的に向上します。
さらに、車体側面に装着するサイドバッグを追加すれば、まさに敵なしの積載量を誇るグランドツアラー仕様となります。
あなたのPCXを「究極のツアラー」にするカスタムプラン例
これらのカスタムを組み合わせることで、PCXは大型バイクにも引けを取らないほどの快適なツーリングマシンへと変貌を遂げます。
例えば、以下のようなパッケージが考えられます。
【日帰り快適仕様】
ロングスクリーン + ゲルザブ + スマートフォンホルダー & USB電源
【泊りがけ万全仕様】
上記に加え、コンフォートシート + リアボックス(40Lクラス) + グリップヒーター
【日本一周も夢じゃない!究極仕様】
さらに上記に加え、高性能リアサスペンション + ナックルバイザー + サイドバッグ
重要なのは、いきなり全てのカスタムを行うのではなく、まずはノーマルで走り込み、自分が「何に一番不満を感じるか」を見極めることです。
そして、その課題を解決するためのパーツから優先的に導入していく。
そうしたバイクとの対話の過程もまた、カスタムの大きな楽しみの一つと言えるでしょう。
総括:PCXツーリングの魅力と注意点
- PCXは卓越した燃費性能と大容量タンクにより、350km以上の無給油航続を実現します
- スムーズで振動の少ないエンジンと、クラス最高レベルの静粛性が長距離での疲労を大幅に軽減します
- 30Lの大容量シート下収納は、日帰りツーリングの荷物を余裕で飲み込む利便性を誇ります
- 高剛性フレームと14インチ大径ホイールが、小型スクーターとは思えない優れた直進安定性を提供します
- 計算されたシート形状と低重心設計が生む良好な足つき性は、取り回しにおける絶対的な安心感に繋がります
- 標準装備のUSB Type-Cソケットは、現代のツーリングに不可欠なスマートフォン等の充電に極めて有効です
- 125ccモデルは、特に荷物積載時や登坂路において、動力性能に物足りなさを感じることがあります
- 高速道路を走行可能な160ccモデルでも、追い越し加速には余裕がなく、慎重な運転が求められます
- 標準のショートスクリーンでは防風効果が限定的で、高速走行では上半身に強い風圧を受けます
- 軽量な車体は取り回しに優れる反面、橋の上などでの強い横風には流されやすい側面も持ち合わせています
- 多くのユーザーが指摘する標準シートの硬さは、長距離走行でお尻の痛みを引き起こす主な原因です
- ロングスクリーンへの交換は、風圧による疲労と寒さを劇的に軽減する、最も費用対効果の高いカスタムです
- ゲルザブやコンフォートシート、バックレストの導入は、尻痛や腰痛の問題を効果的に解決します
- リアボックスやサイドバッグを追加することで、キャンプツーリングにも対応可能な積載性を確保できます
- 自身の弱点を補う的確なカスタムを施すことで、PCXは理想的な長距離ツーリングパートナーへと進化します
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