ヤマハMT-09。その名を耳にするだけで、多くのライダーが心を躍らせるのではないでしょうか。私自身、長年バイクメディアの世界に身を置き、数々のマシンを試乗してきましたが、MT-09がもたらす「やばい」とまで称される加速体験は、今でも鮮烈な記憶として残っています。
しかし、その圧倒的なパフォーマンスは、時に「速すぎる」「乗りにくい」といった畏怖の声や、購入後に「こんなはずではなかった」と後悔するライダーを生み出してきたのも事実です。
この記事にたどり着いたあなたも、もしかしたら同じような不安を抱えているのかもしれません。
「スロットル操作がシビアで、初心者には到底扱いにくいのではないか?」「長距離ツーリングでは疲れると聞くが、実際の乗り心地はどうなのか?」「硬すぎると言われるシートやサス、エンジンの振動は我慢できるレベルなのか?」といった疑問。
さらには、「SPモデルとの価格差をどう考えるべきか」「壊れやすいという評判や、維持費の高さは本当なのか」「足つきに不安がある自分でも乗れるだろうか」など、懸念は尽きないことでしょう。
中古で買って後悔した、ローンを組んでまで手に入れたのに飽きてしまった、という購入失敗談や、「やめとけ」という辛辣なレビューを目にすれば、決断が鈍るのも無理はありません。
この記事では、単にスペックを解説するだけでなく、私自身の経験も踏まえながら、MT-09の圧倒的な速さの秘密から、皆さんが抱えるであろうリアルな疑問や不安の一つひとつに、誠心誠意お答えしていきます。
カスタムの可能性やネガティブな評判の真相に深く迫り、あなたが心から「買ってよかった」と思える、後悔しないための最適な一台を見つけるお手伝いができれば幸いです。
- MT-09が「速すぎる」と言われる具体的な理由とその技術的背景
- 購入後に「後悔」しやすいポイントと、それを回避するための具体的な対策
- 街乗りや長距離ツーリングにおける、リアルなメリット・デメリット
- あなたのライディングスタイルに合った、後悔しないモデル(STD/SP)の選び方
MT-09が速いと言われる理由と性能の核心
- 速すぎると言われる「やばい」加速性能
- MT-09のスロットル操作は難しい?乗りにくい?
- 初心者には扱いにくい?気になる足つきの不安
- 購入前に知りたいMT-09の欠点とは
- 壊れやすいという評判は本当か?
速すぎると言われる「やばい」加速性能
MT-09が「速すぎる」と評される根源、それは間違いなく、その心臓部に搭載された888ccの水冷並列3気筒「CP3」エンジンの存在にあります。
2024年モデルで公表されている最高出力は120PS/10,000rpm。
この数値だけを見ても、そのポテンシャルの高さは窺えますが、MT-09の「やばさ」は、単なるピークパワーの高さだけでは語れません。
私が初めて現行モデルのMT-09のスロットルを捻った時の衝撃は、今でも忘れられません。街中の交差点で信号が青に変わった瞬間、ほんの少し多めにアクセルを開けただけなのに、まるで景色が歪むかのように周囲が後方へ飛んでいく。
それは「速い」という言葉では生ぬるいほどの、強烈なGを伴う「射出」とでも言うべき体験でした。
この異次元の加速感の秘密は、ヤマハが長年MotoGPなどのレースシーンで培ってきた「クロスプレーン・コンセプト」に基づき設計されたエンジン特性にあります。
多くのエンジンが特定の回転域でパワーの山場を迎えるのに対し、CP3エンジンは、スロットルを開けた瞬間から最大トルク(93N・m/7,000rpm)に近い力が湧き出し、それがレブリミットまで途切れることなく続いていくのです。
まさに、どの回転域からでも即座に戦闘態勢に入れる、驚異的な柔軟性と瞬発力を兼ね備えています。
技術が裏付ける圧倒的なパフォーマンス
このエンジン性能を余すことなく路面に伝えるため、車体にもヤマハの先進技術が惜しみなく投入されています。
- CFアルミダイキャストフレーム:軽量でありながら高い剛性を確保するヤマハ独自の製造技術。薄い部分と厚い部分を巧みに組み合わせることで、軽さと強度の理想的なバランスを実現し、鋭い加速と軽快なハンドリングに貢献しています。
- スピンフォージドホイール:これもヤマハ独自の技術で、鋳造ホイールを回転させながら圧力を加えて引き伸ばすことで、鍛造ホイールに匹敵する軽さと強度を生み出します。バネ下重量の軽減は、加速性能の向上に直結する重要な要素です。
これらの技術が可能にする193kgという軽量な車体と、強力なエンジンが生み出すパワーウェイトレシオは、まさに驚異的。海外のバイク専門メディアでは、0-60mph(約96.5km/h)加速が3秒を切るというデータも報告されており、これは1000ccクラスのスーパースポーツや、数千万円クラスのスーパーカーに匹敵する数値です。
最高速度も、テスト環境下では約230km/hに達すると言われており、そのポテンシャルは計り知れません。
しかし、忘れてはならないのは、この圧倒的なパワーは諸刃の剣でもあるということです。私自身、慣れない頃に少しラフなスロットル操作をしてしまい、意図せずフロントタイヤが浮き上がり、背筋が凍る思いをした経験があります。
幸い、すぐに電子制御(リフトコントロール)が介入して事なきを得ましたが、一歩間違えれば大事故につながりかねません。
この「やばい」パワーを安全に、そして最大限に楽しむためには、次項で解説する高度な電子制御システムへの深い理解が、絶対的に不可欠となるのです。
MT-09のスロットル操作は難しい?乗りにくい?
「MT-09はスロットルの反応が鋭敏すぎて、乗りにくい」。これは、特に2014年に登場した初代モデルによく聞かれた評価でした。私自身も初代モデルを試乗した際、特にタイトな市街地で、ほんの少しのアクセル開度にもエンジンが過剰に反応してしまい、スムーズな走行を維持するのに神経を使った記憶があります。
いわゆる「ドンツキ」と呼ばれるこの挙動は、MT-09の大きな魅力であるダイレクトな操作感の裏返しであり、多くのライダーを悩ませる要因となっていました。
しかし、ヤマハもその点を課題として認識しており、モデルチェンジを重ねるごとに熟成を進めてきました。そして、現行の第4世代MT-09では、この「乗りにくさ」は過去のものになったと断言できます。
その進化の核となっているのが、極めて高度に進化した電子制御システムです。これは単なる補助装置ではなく、MT-09というマシンのキャラクターそのものを、ライダーの意のままに変化させる「調律装置」と言えるでしょう。
6軸IMUとYCC-Tがもたらす革新的な乗りやすさ
現行MT-09には、スーパースポーツモデル「YZF-R1」で培われた「6軸IMU(Inertial Measurement Unit)」が搭載されています。
これは、ピッチ、ロール、ヨーの回転運動と、前後、上下、左右の加速度を1秒間に125回という驚異的な頻度で検出し、車両の動きを立体的に把握するセンサーです。
この情報をもとに、ヤマハ独自の電子制御スロットル「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle)」が、スロットルバルブの開き方をミリ秒単位で最適に制御します。
つまり、ライダーがスロットルをガバッと開けたとしても、IMUが「今は車体が傾いているから、急激なパワーをかけると危険だ」と判断すれば、エンジンが穏やかな反応を示すようにECUがYCC-Tへ指示を出すのです。
この緻密な制御こそが、かつての「乗りにくさ」を過去のものにした最大の要因です。
この高度なシステムを、ライダーがより直感的に扱えるようにしているのが、ステアリングスイッチで簡単に切り替えられる「ライディングモード」です。
例えば、雨の日や慣れない道では、最も穏やかな出力特性と電子制御の介入度が最も高い「RAIN(モード4)」を選べば、まるで250ccクラスのバイクに乗っているかのような安心感で走行できます。
逆に、ワインディングやサーキットでMT-09の牙を剥きたい時には、最もダイレクトな反応を示す「SPORT(モード1)」を選べば、指先の動きに即応するカミソリのようなレスポンスを楽しむことができるのです。
私のお気に入りは、街中では穏やかな「STREET(モード2)」、郊外の快走路に出たらダイレクトな「SPORT(モード1)」に切り替えるという使い方です。
この切り替えだけで、一台のバイクがまるで二つの顔を持つかのようにキャラクターを変える。これこそが現代のMT-09が提供する新しいライディングの楽しみ方であり、もはや「乗りにくい」という言葉が当てはまらない理由なのです。
初心者には扱いにくい?気になる足つきの不安
「120PSもの大パワーは、免許を取ったばかりの初心者には到底扱いきれないのでは?」という声は、非常によく分かります。
結論から言えば、確かにMT-09のポテンシャルを100%引き出すには相応のスキルと経験が必要です。
しかし、「初心者だから乗れない、扱いにくい」ということは決してありません。
その理由は、これもまた現代のテクノロジーの恩恵、すなわちライダーを不測の事態から守るための先進的な安全装備にあります。
先ほど解説した6軸IMUは、スロットル制御だけでなく、様々な安全システムの中核を担っています。
- トラクションコントロールシステム(TCS): 後輪のスリップを検知すると、瞬時にエンジン出力を絞り、車体の安定を保ちます。雨の日のマンホールや、路面に砂が浮いたコーナーなど、ヒヤリとする場面で絶大な効果を発揮します。
- スライドコントロールシステム(SCS): 車体が横滑りするのを検知し、制御します。TCSと連携し、コーナリング中の安定性を高めます。
- リフトコントロールシステム(LIF): 急加速時のフロントタイヤの浮き上がり(ウィリー)を制御します。意図しないフロントアップを防ぎ、加速に集中させてくれます。
これらのシステムが、まるで腕利きのインストラクターのように常にライダーの傍らに控え、万が一の操作ミスをカバーしてくれるのです。
もちろん、これらのシステムに過信は禁物ですが、初心者が陥りがちなパニック的な状況を未然に防いでくれる、強力なセーフティネットであることは間違いありません。
物理的な「扱いにくさ」としての足つき性
電子制御がパワーを御してくれる一方で、物理的なハードルとして立ちはだかるのが足つき性です。MT-09のシート高は825mm。これは国産の同クラスのネイキッドバイクと比較すると、やや高めの数値です。(参考:カワサキ Z900は820mm、スズキ GSX-S1000は810mm)
私(身長176cm)が跨ると両足の踵がわずかに浮く程度ですが、小柄な方や女性ライダーの方にとっては、停車時や押し引きの際に不安を感じる高さかもしれません。
しかし、絶望するにはまだ早いです。MT-09のシートや車体は非常にスリムに設計されており、足を真っ直ぐ下に降ろしやすいため、スペックの数値ほど足つきは悪く感じないことが多いのです。
これは本当に個人差が大きい部分なので、購入を検討される際は、何をおいてもまずディーラーで実車に跨ってみることを強く、強く推奨します。
その上で、もし不安が残るようであれば、以下のような対策も有効です。
- ローダウンキットの導入:サスペンションのリンクを交換することで、シート高を20mm〜30mm程度下げることが可能です。ただし、乗り心地やハンドリングに影響が出る場合があるので、信頼できるショップで相談しながら進めるのが良いでしょう。
- 厚底ライディングブーツの活用:物理的に足の長さを補う、最も手軽で効果的な方法の一つです。
車重が193kgと400ccクラス並みに軽いことも、取り回しの上では大きなアドバンテージになります。足つきという最初のハードルさえクリアできれば、その軽快な車体とインテリジェントな電子制御によって、初心者の方でもきっとMT-09を乗りこなす喜びを感じられるはずです。
購入前に知りたいMT-09の欠点とは
ここまでMT-09の素晴らしい性能について語ってきましたが、どんなバイクにも必ず長所と短所があります。
購入後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔の念に駆られることのないよう、ここではあえてMT-09が抱えるウィークポイント、すなわち「欠点」に焦点を当てていきたいと思います。
これらを事前に理解し、ご自身のライディングスタイルや価値観と照らし合わせることが、後悔しないバイク選びの鍵となります。
1. スポーツ性と引き換えのサスペンション特性(スタンダードモデル)
まず、多くのレビューで指摘されるのが、スタンダードモデルのサスペンション設定です。これは決して「品質が悪い」という意味ではありません。
むしろ、街乗りやツーリングといった一般的なシチュエーションでの快適性を重視した、非常にしなやかで懐の深いセッティングが施されています。路面の細かな凹凸をスムーズに吸収し、乗り心地は良好です。
しかし、その「優しさ」が、スポーツライディングの領域では裏目に出ることがあります。例えば、峠道でペースを上げてコーナーに進入する際、強いブレーキングでフロントサスペンションが大きく沈み込み、やや不安定な挙動を示すことがあります。
また、コーナーからの立ち上がりでアクセルを大きく開けた際には、リアサスペンションが沈んでしまい、トラクションが抜け気味になる感覚を覚えるかもしれません。
私自身、スタンダードモデルでサーキットを走行した経験がありますが、やはり高速コーナーや切り返しでは、車体の収まりが悪く、どこかフワフワとした頼りなさを感じました。
もちろん、一般的なペースで走る分には何の問題もありません。しかし、MT-09のエンジンが持つ本来のポテンシャルを解放し、よりハードな走りを楽しみたいと考えるライダーにとっては、このサスペンション設定は物足りなく感じる可能性が高いでしょう。
この点が、後述する上級グレード「SPモデル」の存在価値を際立たせています。
2. ネイキッドバイクの宿命、風との戦い
次に挙げるのは、MT-09特有というよりは、カウルのないネイキッドバイク全般に共通する欠点です。それは、高速走行時における風圧の問題です。
シャープでアグレッシブなスタイリングはMT-09の大きな魅力ですが、そのデザインは空気の壁からライダーを保護してはくれません。
時速80kmを超えたあたりから風圧を感じ始め、100km/hでの巡航ともなると、上半身が常に風に押さえつけられるような状態になります。
これは、特に長時間の高速道路走行において、じわじわと体力を奪っていく要因となります。首や肩、腕への負担が蓄積し、ツーリングの後半にはヘトヘトになってしまう…という経験をした方も少なくないでしょう。
快適なロングツーリングを夢見てMT-09を購入したものの、この風圧に音を上げてしまった、という話は残念ながらよく耳にします。
3. 実用性の低さ(積載能力と快適性)
MT-09は、その設計思想からして「ファン・トゥ・ライド」を最優先しており、日常的な利便性や快適性は、ある程度割り切られていると言わざるを得ません。
- 積載能力の欠如:リアシート周りは非常にコンパクトで、デザイン性を重視しているため、荷物を積むスペースは皆無に等しいです。純正の荷掛けフックも申し訳程度にしかなく、シートバッグなどを安定して固定するには工夫が必要です。
タンデムシート下の収納スペースも、ETC車載器と書類を入れたらほぼ満杯。通勤や買い物で少し荷物が増えただけでも、リュックサックを背負う以外の選択肢は限られます。 - エンジンの熱:特に夏場の渋滞路では、エンジンの発する熱がライダーの脚を直撃します。CP3エンジンは比較的発熱量が少ない方だとは言われていますが、それでもジーンズ越しに熱気が伝わり、不快に感じることがあります。
- エンジンの振動:3気筒エンジン特有の鼓動感は魅力の一つですが、特定の回転域(特に高速巡航で使うことが多い回転域)で、ハンドルやステップに微振動を感じることがあります。
短時間なら気にならなくても、長時間乗り続けると、手の痺れや疲労の原因となる可能性があります。
これらの欠点は、どれも工夫やカスタムによってある程度は改善可能です。しかし、購入する段階で「MT-09は走りの楽しさにステータスを全振りしたバイクであり、快適性や実用性はトレードオフの関係にある」という事実を理解しておくことが、後の後悔を防ぐ上で非常に重要になります。
壊れやすいという評判は本当か?
「ヤマハのバイクは壊れやすい」「MT-09は電装系が弱い」といったネガティブな評判を、インターネット上などで見かけたことがあるかもしれません。
特に高価な買い物となる大型バイクですから、故障のリスクは最も気になるポイントの一つでしょう。
長年この業界に携わってきた経験から結論を申し上げると、「現代のヤマハ車、特にMT-09が、他メーカーの同クラスのバイクと比較して突出して壊れやすいということはありません」。
日本の工業製品、とりわけ国内4大メーカーの品質管理レベルは世界的に見ても非常に高く、適切に扱えば、そう簡単に深刻な故障に見舞われることは稀です。
では、なぜ「壊れやすい」という評判が生まれるのでしょうか。これにはいくつかの理由が考えられます。
「壊れやすい」と言われる背景
- 初期モデルのトラブル情報:どんな工業製品にも言えることですが、発売当初の初期ロットには、予期せぬ不具合が含まれていることがあります。
MT-09も、過去にはリコール対象となった事例や、特定の部品(例えば、カムチェーンテンショナーやクイックシフターのセンサーなど)に不具合が集中した時期がありました。
インターネット上では、こうした過去の情報が残り続け、あたかも現行モデルにも当てはまるかのように拡散されてしまうことがあります。 - ハイパフォーマンスゆえのシビアさ:MT-09は、極めて高い性能を持つエンジンを搭載しています。
こうした高性能エンジンは、その性能を維持するために、マニュアルで定められた通りの定期的なメンテナンスが不可欠です。
例えば、オイル交換のサイクルを大幅に過ぎてしまったり、推奨されていない安価なオイルを使用したりすると、エンジンの寿命を著しく縮める原因となります。
性能が高い分、メンテナンスを怠った際の影響が、より一般的な性能のバイクよりも顕著に現れやすいのです。
オーナーのメンテナンス不足が、結果として「バイクが壊れた」という評価につながっているケースは少なくありません。 - 複雑な電子制御システム:現代のバイクは、多数のセンサーとコンピュータによって制御されています。
MT-09も例外ではなく、これはユーザーに多大な恩恵をもたらす一方で、ごく稀にセンサーの誤作動や接触不良といったトラブルを引き起こす可能性を秘めています。
原因の特定が難しく、修理に時間がかかることもあるため、こうした経験が「電装系が弱い」という印象を与えてしまうことがあります。
要するに、MT-09は「か弱いお姫様」ではなく、「最高のパフォーマンスを発揮し続けるために、専属のトレーナーによる適切なケアを必要とするトップアスリート」のような存在だと考えるのが的確です。そして、そのトレーナー役を担うのが、オーナーであるあなた自身と、信頼できるバイクショップなのです。
ヤマハの製品保証(新車登録から2年間・走行距離無制限)に加え、多くのディーラーが独自の延長保証制度を設けています。(例:YSPの3年保証など)
こうした保証制度を有効に活用し、メーカーが推奨する正規の点検・整備を欠かさずに行うこと。そして、何か違和感を覚えたら、すぐに専門家に相談すること。
この基本的な約束事を守りさえすれば、MT-09があなたの期待を裏切ることはまずないでしょう。日々の愛情を込めたケアこそが、信頼性を高める最良の手段なのです。
MT-09は速いだけ?後悔しないための注意点
- MT-09は長距離ツーリングだと疲れる?
- 「飽きた」の声も?気になる維持費
- SPモデルとの違いで後悔しないために
- 実際のオーナーによるレビュー評価
- カスタムで引き出すさらなるポテンシャル
- 総括:MT-09が速い理由と賢い選び方
MT-09は長距離ツーリングだと疲れる?
「MT-09で日本一周は可能か?」これは、私がよく受ける質問の一つです。答えは「イエス」ですが、そのためにはいくつかの「ただし」がつきます。
前項でも触れましたが、MT-09はその設計思想から、快適なクルージングを主眼に置いたツアラーモデルとは一線を画します。
スポーツ性能に特化しているがゆえに、長時間のライディングでは疲労を感じやすいという声が多いのは紛れもない事実です。
この「疲れ」の正体を分解していくと、主に3つの要因が見えてきます。これらを理解し、対策を講じることが、MT-09での快適なロングツーリングを実現するための第一歩となります。
- ライディングポジションが強いる緊張:MT-09のライディングポジションは、リラックスした状態というよりは、いつでもマシンをコントロール下に置けるような、適度な緊張感を伴うものです。
やや前傾した上半身、高めに設定されたステップ位置は、ワインディングでの機敏な体重移動には最適ですが、同じ姿勢を何時間も維持し続けると、肩や背中、腰といった特定の部位に負担が集中しやすくなります。 - 風圧という見えない壁:時速100km/hで走行しているライダーが受ける風圧は、想像以上です。
常に前から強い力で押さえつけられているようなもので、それに抗うために首や上半身の筋肉は無意識のうちに力を使い続けます。
これが、ロングツーリングにおける疲労の最大の原因と言っても過言ではありません。特に、向かい風の強い日などは、体力の消耗が著しくなります。 - シートが伝える路面からの情報:MT-09の標準シートは、比較的薄く、硬めに作られています。
これは、ライダーがお尻を通して路面の状況やタイヤのグリップ感をダイレクトに感じ取れるようにするためであり、スポーツライディングにおける重要な要素です。
しかし、この「情報量の多さ」は、快適性とはトレードオフの関係にあります。
路面からの細かな振動や衝撃が、クッションで十分に吸収されずに直接体に伝わるため、長時間乗り続けるとお尻の痛みや疲労につながるのです。
私自身、MT-09で片道400kmほどの日帰りツーリングに出かけたことがありますが、帰りの高速道路では、これら3つの要因が複合的に作用し、正直かなり体にこたえました。
しかし、だからといって「MT-09はツーリングに向かない」と結論付けるのは早計です。なぜなら、これらの課題は、先人たちの知恵と工夫、そして豊富なカスタムパーツによって、大きく改善することが可能だからです。
「疲れ」を「楽しさ」に変えるための具体的な対策
MT-09のスポーツ性能を損なうことなく、ツーリングの快適性を向上させるための具体的なアプローチをいくつかご紹介します。
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- ウインドスクリーンの戦略的導入
最も効果的な対策の一つです。
小さなスクリーンでも、体に直接当たる風の流れを変えるだけで、疲労度は劇的に変わります。
デザイン性を損なわない小ぶりなものから、高い防風効果を持つ大型のものまで様々な製品があるので、自分の用途に合わせて選ぶのが良いでしょう。 - ゲル入りコンフォートシートへの換装
ヤマハ純正オプションとしても用意されているコンフォートシートは、厚みとクッション性を増し、お尻への負担を大幅に軽減してくれます。
社外品には、さらに衝撃吸収性に優れたゲル素材を内蔵したものなどもあり、投資する価値は十分にあります。
- ウインドスクリーンの戦略的導入
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- ハンドルポジションの最適化
「ハンドルアップスペーサー」や「セットバックホルダー」といったパーツを使えば、ハンドル位置を数センチ高く、手前に寄せることができます。
これにより、上半身が起きた、よりリラックスしたポジションとなり、長距離走行が格段に楽になります。
- ハンドルポジションの最適化
- クルーズコントロールという最終兵器(SPモデル):もしあなたが長距離ツーリングを頻繁に行うのであれば、「SPモデル」の選択は非常に賢明です。
高速道路で右手を開放できるクルーズコントロールの恩恵は絶大で、右手の疲労から解放されるだけでも、ツーリング全体の快適性が全く別の次元に引き上げられます。
これらの対策を施すことで、MT-09は「刺激的なスポーツバイク」でありながら、「信頼できる旅の相棒」という二つの顔を持つ、万能なマシンへと進化を遂げます。少しの工夫で、その楽しみ方は無限に広がるのです。
「飽きた」の声も?気になる維持費
「あれほど刺激的だった加速にも、いずれ慣れて飽きてしまうのでは?」あるいは、「特徴的なデザインも、毎日見ていると新鮮味がなくなるかもしれない」。
こうした「飽き」に対する懸念も、購入を検討する上での一つの不安要素かもしれません。確かに、人間の感覚は順応するものであり、どんなに強烈な刺激も、いずれは日常の一部となります。
しかし、MT-09の懐の深さは、そう簡単に底が見えるものではありません。
前述の通り、このバイクの真価は、オーナーの成長や趣向の変化に合わせて、自在にその姿を変えられる高いカスタマイズ性にあります。
例えば、最初は街乗りメインだったけれど、ライディングスキルが向上してサーキット走行に興味が出てきた。そんな時には、サスペンションやブレーキを強化し、バックステップを組むことで、本格的なスポーツ走行に対応するマシンへと変貌させることができます。
デザインに飽きてきたら、思い切って外装パーツを交換し、自分だけのオリジナルカラーに塗り替えてみるのも良いでしょう。MT-09は、オーナーと共に成長し、変化し続けることができる、非常に懐の深いプラットフォームなのです。
一方で、より現実的で、避けては通れないのが維持費の問題です。バイクライフを長く楽しむためには、この経済的な側面を直視することが不可欠です。
MT-09はハイパフォーマンスマシンであるがゆえに、その性能を維持するためには、相応のランニングコストがかかることを覚悟しておく必要があります。
項目 | 費用の目安 | 内容・注意点 |
---|---|---|
軽自動車税 | 6,000円 | 毎年4月1日時点の所有者に課税されます。 |
自賠責保険 | 約4,000円~5,000円 (24ヶ月契約の場合の1年あたり) | 車検ごとに加入が義務付けられています。契約期間によって1年あたりの金額は変動します。 |
任意保険 | 30,000円~100,000円 | 年齢、等級、補償内容、運転者限定の有無などによって大きく変動します。特に年齢の若いライダーは高額になる傾向があります。 |
燃料代 | 約57,000円 (年間5,000km走行と仮定) | 燃費を18km/L、ガソリン価格を170円/Lと仮定した場合の計算例です。走行距離や運転スタイルによって大きく変わります。 |
メンテナンス・消耗品代 | 50,000円~ | オイル交換(年2回)、タイヤ交換(1.5万kmごと)、ブレーキパッド、チェーンなどを考慮。特にタイヤはグリップ性能の高い高価なモデルを選ぶことが多く、タイヤ交換だけで5~7万円程度の出費となります。 |
車検費用という大きな出費
上記に加えて、2年に一度車検費用が必要になります。ユーザー車検であれば2万円程度で済ませることも可能ですが、消耗品の交換や専門的な整備をショップに依頼する場合、5万円から10万円以上の費用がかかることも珍しくありません。
これらの費用を合計すると、年間で最低でも15万円以上、走行距離やメンテナンスの内容によっては20万円を超える維持費が必要になる可能性があります。
「購入資金は何とかなったけれど、維持費が捻出できずに手放さざるを得なくなった」というのは、最も悲しい後悔の形です。ご自身の経済状況と照らし合わせ、無理のないバイクライフの計画を立てることが、何よりも重要です。
SPモデルとの違いで後悔しないために
MT-09の購入を検討する上で、ほぼ全ての人が直面するであろう最大の選択肢、それが「スタンダードモデルにするか、それとも上級グレードのSPモデルにするか」という問題です。
2024年モデルの場合、その価格差は約20万円。 결して小さな金額ではないため、多くの人がここで頭を悩ませることになります。
この選択を誤ると、「やっぱりあっちにしておけば良かった…」という、後々まで引きずる大きな後悔につながりかねません。
私自身、両方のモデルをじっくりと乗り比べた経験から言えるのは、「この2台は、似て非なるもの」だということです。
見た目のスタイルは似ていますが、その乗り味や提供してくれる価値は、価格差以上に大きいと感じています。
後悔しない選択をするためには、SPモデルが持つ「特別な価値」を正確に理解することが不可欠です。
SPモデルの主な専用装備とその恩恵を、より具体的に掘り下げてみましょう。
装備 | スタンダードモデル | SPモデル(専用装備) | SPモデルの具体的なメリット |
---|---|---|---|
フロントサスペンション | KYB製倒立フォーク(圧側・伸側調整可能) | KYB製フルアジャスタブル倒立フォーク(DLCコーティング) | 摩擦抵抗を低減するDLCコーティングにより、極めてスムーズな作動性を実現。路面の微細な凹凸にも追従し、上質でしなやかな乗り心地と、正確なハンドリングをもたらします。セッティングの幅も広がり、より高度な要求に応えます。 |
リアサスペンション | KYB製リンク式モノクロスサス(伸側調整可能) | ÖHLINS製フルアジャスタブルリアショック | モータースポーツ界で絶大な信頼を誇るオーリンズ製。高い路面追従性でタイヤのグリップ感を常にライダーに伝え、コーナリング時の圧倒的な安心感を生み出します。乗り心地も格段に向上し、長距離でも疲れにくくなります。 |
フロントブレーキ | NISSIN製ラジアルマスターシリンダー | Brembo製Stylemaモノブロックキャリパー | MotoGPマシンにも採用されるブレンボの最高峰キャリパー。圧倒的な制動力と、指先のわずかな力加減にも応える絶妙なコントロール性を両立。限界域でのブレーキングにおいて、その真価を発揮します。 |
クルーズコントロール | なし | 標準装備 | 時速50km以上で設定可能。高速道路での巡航時にアクセル操作から解放され、右手の疲労を劇的に軽減します。長距離ツーリングの快適性を根本から変える、極めて価値の高い装備です。 |
スマートキーシステム | なし | 標準装備 | キーをポケットやバッグに入れたままでエンジン始動やハンドルロックの操作が可能。日常的な使い勝手、特に給油時や荷物を持っている際の利便性が大幅に向上します。 |
スイングアーム | 塗装仕上げ | バフ研磨+クリア塗装仕上げ | アルミニウムの質感を活かした美しい仕上げ。性能への影響はありませんが、所有感を満たす上質なディテールです。 |
結局、どちらを選ぶべきか?
この問いに答えるための、私なりの判断基準は非常にシンプルです。
【スタンダードモデルがおすすめな人】
- 購入予算を何よりも優先したい方。
- 主な用途が街乗りや、比較的ペースの落ち着いた日帰りツーリングである方。
- サスペンションやブレーキは、後々自分の好みに合わせてじっくりとカスタムしていきたいと考えている方。
【SPモデルが絶対におすすめな人】
- 月に一度以上、高速道路を使った長距離ツーリングに出かける方。(クルーズコントロールの恩恵は絶大です)
- ワインディングロードで、よりスポーティで質の高い走りを楽しみたい方。
- 将来的にサーキット走行も視野に入れている方。
- 「最高のものを所有したい」という、所有感を重視する方。
ここで重要なのは、「後からカスタムすれば良い」という考え方の落とし穴です。
確かに、スタンダードモデルを購入後にオーリンズのサスペンションやブレンボのキャリパーを装着することは可能です。
しかし、それらのパーツ代と工賃を合計すると、20万円の価格差を優に超えてしまいます。さらに、後付けではクルーズコントロールやスマートキーといった電子装備を追加することはできません。
これらの装備に少しでも魅力を感じるのであれば、最初からSPモデルを選択する方が、結果的にコストパフォーマンスは圧倒的に高いのです。
「安物買いの銭失い」ならぬ、「スタンダード買いの投資増し」にならないよう、ご自身のバイクライフを長期的な視点で見つめ、賢明な判断を下してください。
実際のオーナーによるレビュー評価
これまで、私自身の経験や技術的な側面からMT-09を解説してきましたが、ここではより客観的な視点を取り入れるため、価格.comやみんカラといったレビューサイト、そしてYouTubeなどで語られる実際のオーナーたちの「生の声」をまとめてみたいと思います。
これらの声は、これからオーナーになるあなたにとって、非常に価値のある羅針盤となるはずです。
絶賛の嵐!ポジティブな評価
まず、ポジティブな評価で圧倒的多数を占めるのは、やはりその走行性能に関するものです。
- 「異次元」「ワープ」と評されるエンジン性能:「どのギアからでも、アクセルを開ければ即座に猛烈な加速が始まる」「4気筒のスムーズさとは違う、地面を蹴り飛ばすようなトルク感が病みつきになる」といった、CP3エンジンの独特なフィーリングとパワーを絶賛する声が後を絶ちません。
- 400ccクラスと錯覚するほどの軽快なハンドリング:「車重193kgという数値以上に軽く感じる」「交差点を曲がるだけでも楽しい」「自分の意のままにヒラヒラと操れる感覚が最高」など、その軽量な車体が生み出す軽快な運動性能も、多くのライダーを虜にしています。
- 驚異的なコストパフォーマンス:「これだけの電子制御と性能が、この価格で手に入るのは信じられない」「SPモデルは、装備を考えればバーゲンプライス」といった、価格に対する満足度の高さも、MT-09の大きな特徴です。
- 唯一無二のアグレッシブなデザイン:「昆虫のよう」「ロボットのよう」と表現されることもある独特のフロントマスクや、凝縮感のあるスタイリングが、「他のバイクにはない個性があって好き」というオーナーも非常に多いです。
覚悟が必要?ネガティブな評価
一方で、もちろんネガティブな評価も存在します。そして、興味深いことに、その多くは特定のポイントに集中しています。
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- 「拷問器具」とまで言われるシートの硬さ:これは、年式やグレードを問わず、MT-09に関する不満点で最も多く挙げられるポイントです。
「1時間も乗るとお尻が4つに割れる」「デザインは良いが、快適性は皆無」など、辛辣な意見が目立ちます。
多くのオーナーが、納車後すぐにコンフォートシートへの交換を検討するようです。 - 高速道路での疲労感:前述の通り、風圧の問題と、特定の回転域で発生するエンジンの微振動が、長距離走行時の快適性を損なっているという声は根強くあります。
「楽しいのは下道だけで、高速道路は苦行」とまで言い切る人も。
- 「拷問器具」とまで言われるシートの硬さ:これは、年式やグレードを問わず、MT-09に関する不満点で最も多く挙げられるポイントです。
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- シビアな足つき性:「スペック以上に足つきが悪い」「信号待ちで常に爪先立ちになるので、精神的に疲れる」など、特に小柄なライダーからの悲鳴にも似た声が散見されます。
- 皆無に等しい積載性:「デザインのために実用性を捨てすぎている」「ツーリングネットをかける場所すらない」など、積載能力の低さに対する不満も定番と言えるでしょう。
これらのオーナーレビューを総合すると、「走りの楽しさ」という一点においては、ほとんどのオーナーが満点に近い評価を与えていることが分かります。
その一方で、「快適性」や「実用性」については、多くのオーナーが何らかの不満を感じており、それを割り切るか、カスタムによって克服しているという構図が見えてきます。
MT-09は、まさに「走りの快楽」に特化した、良くも悪くも非常に尖ったバイクであると言えるでしょう。この特性を理解し、愛せるかどうかが、購入後に後悔しないための最大の分水嶺となりそうです。
カスタムで引き出すさらなるポテンシャル
MT-09というバイクの魅力を語る上で、絶対に外せないのが「カスタム」という要素です。もし、あなたが手に入れたMT-09に何らかの不満を感じたとしても、決して悲観する必要はありません。
なぜなら、MT-09は世界的な人気モデルであるがゆえに、国内外の無数のパーツメーカーから、星の数ほどのカスタムパーツがリリースされているからです。
それは、まさに「無いものは無い」と言っても過言ではないほどの、広大で奥深い世界です。
カスタムは、単に見た目を変えるだけでなく、性能を向上させ、さらにはネガティブな要素を解消するための、最も有効な手段となり得ます。
ここでは、数あるカスタムの中から、特に人気が高く、効果を体感しやすいメニューをいくつかご紹介しましょう。
1. 五感を刺激するエキゾーストシステム
ノーマルマフラーでも、CP3エンジン特有の迫力あるサウンドを楽しむことはできますが、より刺激的な体験を求めるなら、マフラー交換は外せないカスタムの筆頭です。
フルエキゾーストシステムに交換すれば、大幅な軽量化(チタン製なら5kg以上の軽量化も可能)による運動性能の向上と、エンジンの出力特性の最適化(馬力アップ)が期待できます。
そして何より、腹に響くような重低音から、管楽器のように澄んだ高周波サウンドまで、メーカーによって全く異なる音質を選ぶ楽しみがあります。
ただし、公道で走行する場合は、必ずJMCA認証プレート付きの車検対応品を選ぶようにしてください。
2. 走りの質を根底から変えるサスペンション
「SPモデルとの違い」の項でも触れましたが、走りの質に最も大きな影響を与えるのがサスペンションです。もしあなたがスタンダードモデルのオーナーで、その走りに物足りなさを感じているなら、前後サスペンションユニットの交換は、最も劇的な変化をもたらすカスタムとなるでしょう。
オーリンズやナイトロン、ハイパープロといった一流ブランドのサスペンションを装着すれば、路面に吸い付くような安定感と、上質な乗り心地を手に入れることができます。
その費用は決して安くはありませんが、投資した金額以上の満足感を得られることは間違いありません。
3. 痛みからの解放、至福のシート
「MT-09の最大の欠点はシートである」と断言するオーナーは少なくありません。裏を返せば、シートを交換するだけで、MT-09は全く別のバイクに生まれ変わる可能性を秘めているということです。
ヤマハ純正のコンフォートシートはもちろん、K&HやBAGSTERといった専門メーカーからは、ゲル素材を内蔵してお尻への負担を極限まで減らしたものや、足つき性を向上させるためにあんこ抜き(内部のウレタンを削る加工)を施したものなど、様々なニーズに応える製品が販売されています。
長距離ツーリングの快適性を求めるなら、真っ先に検討すべきカスタムです。
その他にも広がる無限の可能性
上記以外にも、MT-09のカスタムメニューは無限に広がっています。
- ブレーキシステムの強化:ブレンボ製のキャリパーやマスターシリンダー、メッシュホースへの交換で、制動力とコントロール性を向上させる。
- バックステップの導入:よりスポーティなライディングポジションを実現し、コーナリング時のホールド感を高める。
- ECUチューニング(リマップ):エンジンのコンピュータープログラムを書き換え、燃料噴射や点火タイミングを最適化。さらなるパワーとスムーズなレスポンスを引き出す究極のカスタム。
- 外装パーツの交換:カーボンパーツで軽量化とレーシーなルックスを追求したり、カウルキットでツアラー風のスタイルにしたりと、見た目を自分好みに変える。
MT-09は、いわば「素性の良い原石」です。そのままでも十分に魅力的ですが、オーナーが時間と費用、そして愛情を注いで磨き上げていくことで、自分だけの唯一無二の輝きを放つ宝石へと変わっていきます。
購入後も、このように自分色に染め上げていく楽しみが尽きないこと。これこそが、MT-09が多くのライダーを長年にわたって魅了し続ける、最大の理由なのかもしれません。
総括:MT-09が速い理由と賢い選び方
- MT-09の「やばい」速さは、低回転から高回転までリニアなトルクを発生させる888ccの3気筒「CP3」エンジンが源泉
- 193kgという軽量な車体との組み合わせが、0-100km/h約3.5秒という驚異的な加速性能を実現している
- かつて「乗りにくい」と言われたスロットル操作は、現行モデルでは6軸IMUと電子制御スロットルにより大幅に改善
- ライディングモードの選択で、初心者にも扱える穏やかな特性から、サーキット仕様の鋭いレスポンスまで調整可能
- トラクションコントロールなどの高度な安全装備が、万が一の状況でライダーをサポートしてくれる
- 欠点としては、825mmというやや高めのシート高による足つき性の問題が挙げられる
- ネイキッドバイクの宿命として、高速走行時の風圧が大きく、長距離ツーリングでは疲労しやすい
- 標準シートは硬めで、長時間の乗車でお尻が痛くなるという声が非常に多い
- スタンダードモデルのサスペンションは街乗り重視のセッティングで、スポーツ走行では物足りなさを感じる場合がある
- 「壊れやすい」という評判は主に過去の情報で、適切なメンテナンスを行えば信頼性は高い
- 維持費は、特に消耗の早いタイヤなどのコストを考慮し、計画的に準備する必要がある
- SPモデルは、高性能な足回りとクルーズコントロールを装備し、特に長距離・高速走行の頻度が高いライダーには価格差以上の価値がある
- 購入前には必ず実車に跨り、足つきやポジションをご自身で確認することが後悔しないための絶対条件
- マフラー、サスペンション、シートなど、豊富なカスタムパーツで欠点を補い、性能をさらに引き出す楽しみがある
- MT-09は「走りの楽しさ」に特化したバイクであり、快適性や実用性を求める場合は、割り切りかカスタムが必要だと理解することが重要
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